Hierarchy of Dog Needs 2:行動を変えるための技術
はじめに
前回は、ピラミッドの中心となる「5つの階層(ニーズ)」について解説しました。 今回は、図の左側にリストアップされている項目について見ていきます。
ここには、「Do No Harm Force-free Training(害を与えない、強制のないトレーニング)」において、実際にどのような方法を選べばいいかが、リストアップされています。 専門的な用語が並んでいますので解説を加えてみました。
リストの解説
図の上から順に翻訳・解説します。
Management(マネジメント)
環境を調整することで、行動を増やしたり、方向転換させたり、減らしたりすることです。 きっかけ(トリガー)を取り除いたり、距離をとったりします。 (例:ベビーゲートの設置、犬用フェンス、パピー用安全対策など)Antecedent Modification(先行条件の修正)
行動が起こる「前」のイベント(きっかけ・トリガー)を変化させることです。 マネジメントと似ていますが、行動の直前に何が起きているかを見直し、調整することを指します。Positive Reinforcement(正の強化)
望ましい行動をご褒美で強める(増やす)ことです。 (例:キャプチャー、ルアー、シェイピング、モデリングなど)Differential Reinforcement(分化強化)
好ましい行動(拮抗する行動、代わりの行動、他の行動など)に報酬を与えることで、行動の方向転換や減少、あるいは増加を促すことです。 (※ここにDRI、DRA、DROなどの技術が含まれます)Classical and Counter-Conditioning(古典的条件づけと拮抗条件づけ)
感情を変えるための技術です。新しい関連付けを作ります。 ここには Desensitization(脱感作) も含まれます。 脱感作とは、感情的な反応を減らすために、段階的に刺激に慣らしていく計画的なアプローチのことです。Premack Principle(プレマックの原理)
「頻度の高い(好きな)行動」をご褒美として使うことで、「頻度の低い(あまりしない)行動」を強化することです。 (例:「オスワリ(低い頻度)」をしたら「走り回れる(高い頻度)」ようにする)Social Learning / Observational(社会的学習/観察学習)
犬や人間をモデル(見本)として使い、行動を学習させることです。 (例:模倣、エミュレーション、感情の伝播など)
飼い主さんへのヒント:もっと簡単に言うと?
少し難しい言葉が並びましたが、これらのリストが伝えたいことはとてもシンプルです。 毎日の暮らしの中で意識していただきたいポイントを、大きく3つにまとめました。
① まずは「予防」と「環境づくり」
(1. Management / 2. Antecedents) 「どうやって叱ろうか?」と考える前に、「どうすれば失敗せずに済むか?」を考えてみましょう。 イタズラされたくないものは片付ける、ゲートをつける。 環境を整えてあげるだけで、解決できる問題はたくさんあります。
② 感情を変えてあげる
(5. Classical and Counter-Conditioning) 怖がりなワンちゃんに必要なのは、我慢させることではありません。 「これなら怖くないよ」というレベルから少しずつ慣らし(脱感作)、「これがあるといいことがあるよ(オヤツなど)」と教えてあげること(拮抗条件づけ)。 恐怖心を、安心感や楽しさに書き換えてあげる優しいアプローチです。
③ 「良いこと」を増やして解決する
(3. Positive Reinforcement / 4. Differential Reinforcement / 6. Premack) これがトレーニングの要です。 「飛びついちゃダメ!」と禁止するのではなく、「座ってくれたら嬉しいな」と正解を教えて褒める(正の強化・分化強化)。 あるいは「オスワリしたら、大好きなボール遊びができるよ!」と、楽しいことをご褒美にする(プレマックの原理)。 悪いことではなく、良いことに注目して伸ばしていくという考え方です。
まとめ
このリストにある方法はすべて、犬の心と体を傷つけない(Force-free)アプローチです。 愛犬の行動に悩んだ時は、このリストを上から順に眺めて、「今の自分たちにできることはないかな?」と探すためのヒントにしてみてください。
出典
Hierarchy of Dog Needs® Linda Michaels, M.A., Psychology Do No Harm Dog Training
※本記事で紹介した図と概念は、リンダ・マイケルズ氏の許諾・ガイドラインに基づき引用・翻訳しています。
次回は、図の「右側」にある項目について見ていきたいと思います。