Hierarchy of Dog Needs 1:犬に必要なピラミッド
Hierarchy of Dog Needs(犬のニーズの階層)とは
『Hierarchy of Dog Needs(犬のニーズの階層)』は、リンダ・マイケルズ氏(Linda Michaels)が考案した、犬の心身の健康とトレーニングのためのガイドラインです。
アブラハム・マズローの「自己実現理論(欲求階層説)」をご存知の方も多いかもしれません。この図は、その理論を犬の生態や心理にあてはめて作られたものです。 恐怖や強制を使わない(Force-free)アプローチを前提に、犬が健やかに、そして幸せに暮らすために必要な要素が、土台から順に整理されています。
この図の見方
ポイントは、下から上へと積み上がる「ピラミッド構造」になっているという点です。
下層のニーズが満たされて初めて、上層のニーズ(学習や社会的交流など)が機能します。 もしトレーニングがうまくいかない場合や、行動に問題が見られる場合、それは「しつけ(上層)」のやり方ではなく、もっと根底にある「身体的・安心のニーズ(下層)」が満たされていないことに原因があるのかもしれません。
ですので、行動を変えようとする前に、まずは土台となる下の階層から順に確認していく必要があります。
5つの階層
ピラミッドの土台となる最下層から順に見ていきます。
① 身体的ニーズ (Biological Needs)
生存に不可欠な、最も基礎となる土台です。 良質な栄養、新鮮な水、適切な運動、十分な睡眠、快適な室温、適切な医療、そしてグルーミングが含まれます。
② 安心・安全のニーズ (Emotional Needs)
心の安定に関わる領域です。 安心・安全の感覚(Security/Safety)、飼い主との信頼関係、一貫した対応、そして思いやり(Benevolence)が求められます。 ここでは、恐怖や苦痛からの解放(Freedom from fear and distress)が条件となります。
③ 社会性のニーズ (Social Needs)
社会的な動物としての、他者との繋がりです。 飼い主との絆、他犬との関わり、そして遊び(Play)が含まれます。
④ 強制のないトレーニング (Force-free Training Needs)
行動の管理と学習の段階です。 環境設定(マネジメント)、正の強化(Positive Reinforcement)を用いた学習、そして社会化がここにあたります。
⑤ 知的ニーズ (Cognitive Needs)
精神的な充足、いわば自己実現に近い領域です。 自分で選べる(Choice)、新しい刺激(Novelty)、頭を使って考えること(問題解決)で脳に刺激を与えます。
以上、この階層図は、愛犬の現状を客観的に把握するための「地図」のようなものです。
僕たちはつい、ピラミッドの頂点にある「トレーニング(しつけ)」にばかり目を向けてしまいがちです。 しかし、土台となる「身体」や「安心」のニーズが満たされていなければ、どれほど優れたトレーニング技術も、その効果を発揮することはありません。
うまくいかないと感じた時こそ、一度立ち止まって足元(下層)を確認する。 この図は、そのための指針となります。
出典
Hierarchy of Dog Needs® Linda Michaels, M.A., Psychology Do No Harm Dog Training
※本記事で紹介した図と概念は、リンダ・マイケルズ氏の許諾・ガイドラインに基づき引用・翻訳しています。
実はこの図には、ピラミッドを左右から支える大切な要素が、さらに詳しく書かれています。 次回は、図の「左側」にある項目について見ていきたいと思います。