犬に「前を歩かせてはいけない」は本当?愛犬の背中を見守る、幸せな散歩の考え方

「犬は飼い主より前を歩いてはいけない」

これは古くから言われている、しつけの一つです。

そのため、愛犬が自分より前を歩くと、「主従関係が逆転しているのではないか」「下に見られているのではないか」と、不安に思う飼い主さんも少なくありません。

本当に、歩く位置が関係性を決めるのでしょうか。 今回は、この「立ち位置」と「主従関係」について、改めて考えてみたいと思います。

誤解と真実

結論から言うと、犬が前を歩いているからといって、飼い主さんを下に見ているわけではありません。

この「前を歩かせてはいけない」という考え方は、かつての「支配性理論」に基づいています。 オオカミの群れではリーダーが先頭を歩く、だから犬も人間より前を歩かせてはいけない、というものです。

しかし現在、この考え方は大きく見直されています。 研究が進み、オオカミの群れは、力で支配する上下関係ではなく、互いを思いやる「家族」のような関係であることがわかってきたからです。

群れで移動するときも、そこにあるのは強制ではなく、信頼と愛情です。

ですから、犬と人の関係も、支配するかされるかという縦の関係だけで語れるものではないのです。

前を歩くことと、主従関係が崩れていることは、イコールではありません。

位置よりも大切なこと

散歩において本当に大切なのは、「誰が前にいるか」という物理的な位置ではありません。 お互いの「意識」がどこにあるかです。

たとえ犬が前を歩いていたとしても、リードが緩んでいて、時折飼い主さんを振り返ったり、気にかけている様子があるなら、それは心がつながっている状態です。

逆に、無理やり横につけて歩かせても、犬の心が離れていては意味がありません。

愛犬が少し前を歩き、尻尾を揺らして、楽しそうに世界を感じている。 その愛おしい背中を、後ろから優しく見守る。

そんな散歩は、とても豊かで幸せな時間だと思いませんか。

一緒に世界を楽しむために

「前を歩かせてはいけない」というルールに縛られて、せっかくの散歩が窮屈なものになってしまってはもったいないです。

散歩は、誰が偉いかを競う時間ではなく、一緒に世界を楽しむ時間。

愛犬が嬉しそうに前を歩くなら、それもまた一つのコミュニケーションです。 「主従関係」という言葉に縛られすぎず、目の前の愛犬との時間を楽しんでください。

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