犬が寝すぎるのは大丈夫?脳を育てる、学習と睡眠の深い関係

日中、ふと愛犬を見ると、気持ちよさそうに寝ている。 「こんなに寝てばかりで、どこか具合でも悪いのかな?」

そんなふうに心配になったことはありませんか?

結論から言うと、その長い睡眠時間は、多くの場合「正常」です。 むしろ、犬が健やかに生きるために欠かせない、とても大切な時間なのです。

犬にとっても人間にとっても、睡眠は「脳と体のメンテナンス」を行うための重要なシステム。 ただ、犬には犬特有の「眠りの事情」があり、どうしても人間より長い時間が必要になります。

今回は、なぜ犬はそんなに眠るのか、そしてその睡眠中に脳内で起きている「大切な働き」について紐解いていきます。

1日の半分以上?犬の睡眠時間の目安

実際、犬は1日にどれくらい眠るものなのでしょうか。

成犬の場合、平均睡眠時間は約12〜15時間と言われています。 つまり、1日の半分以上を寝て過ごしていることになります。

さらに、成長期にある子犬や、体力の落ちてきたシニア犬になると、その時間はもっと長くなります。 個体差はありますが、18時間以上寝ることも珍しくありません。

人間の睡眠時間は7〜8時間ほどですから、比べると倍近くの差があります。

なぜ、そんなに長く寝るのか

睡眠の役割は同じなのに、なぜこれほど時間に差があるのでしょうか。 その理由は、睡眠の深さの違いにあります。

人間は、深い眠り(ノンレム睡眠)の時間が長く、効率よく体を休めることができます。 対して、犬の眠りは浅いのが特徴です。

野生の時代、敵や獲物の気配にすぐ反応する必要があった名残だと言われています。

眠りの約8割が浅い状態(レム睡眠)で、ぐっすり深く眠れている時間はわずかしかありません。

「いつでも起きられる」という浅い眠りで過ごしている分、体と脳をしっかり休めるには、どうしても長い時間が必要になるのです。

寝ている間に起きている「学習」

そしてもうひとつ、睡眠には大切な役割があります。 それは、記憶の整理と定着です。

犬が寝ているとき、脳は休んでいるだけではありません。 その日にあった出来事や、トレーニングで覚えたことを、脳の中で再生し、整理しています。

楽しかったこと、怖かったこと、そして「こうしたら褒められた」という経験。 それらを整理し、記憶として定着させる作業が、睡眠中に行われています。

つまり、トレーニングの効果は、練習している最中だけでなく、その後の睡眠によってしっかりと身についていくのです。

「寝る子は育つ」と言いますが、犬の場合、「寝る子は賢くなる」と言えるのかもしれません。

飼い主ができるサポート

この大切な時間を守るために、私たちにできることがあります。 それは、安心して眠れる環境を整えることです。

先ほどお話しした通り、犬の眠りはとても浅いものです。 わずかな物音や気配でも、すぐに覚醒してしまいます。

人の出入りが激しい場所や、常に騒がしい場所では、十分に脳を休めることができません。

静かな場所にクレートやベッドを用意し、そこで寝ているときは、決して邪魔をしてはいけません。 可愛いからといって、むやみに触れたり起こしたりしてはダメですよ。

今は大事な仕事中なんだと思って、そっと見守ってあげてください。

その寝顔を見ていると、つい触りたくなってしまいますが、そこはぐっと我慢です。

寝ている時間は、退屈な時間ではなく、脳をアップデートしている大切な時間です。

今日もいい仕事してるねと、温かく見守ってあげましょう。

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「ダメ」と止めるより、「正解!」と伝える。正の強化でつくる、犬との叱らない暮らし。