家族全員が同じ対応をしないと、犬のトレーニングはうまくいかない?
お父さんが家にいるとき、犬は玄関で飛びつきません。でも、子どもが学校から帰ってくると、玄関で飛びつきます。
食卓では、お父さんもお母さんも犬を見ません。手も出しません。ただ、おばあちゃんだけが、テーブルの下でこっそり何かを渡しています。
同じ家で、同じ犬に起きていることです。
犬は、相手によって行動を変えています。では、犬の側から見たとき、この家はどんな場所なのでしょうか。
トレーニングとは「教えること」だと考えています
その前に、ひとつ前提を置かせてください。
僕は、トレーニングとは「教えること」だと考えています。一般的な定義ではありません。犬を従わせることでも、言うことを聞かせることでもなく、こうすればうまくいくよ、と伝えていく作業だと捉えています。
この捉え方をすると、ひとつ困ったことが見えてきます。教えることであるなら、飼い主は先生です。そして家庭には、先生が何人もいます。お父さん、お母さん、子ども、おじいちゃん、おばあちゃん。全員がそれぞれのやり方で、同じ一頭に教えています。
先生が何人もいる家で、犬に起きること
教える内容が揃っていないとき、犬には3つのことが起こります。
ひとつめ。世界が予測できなくなります。
学習は「こうしたら、こうなった」という結びつきでできています。同じことをしたのに相手によって結果が変わるなら、その結びつき自体が成立しません。教わっているようで、犬には混乱だけが残ります。
ふたつめ。やめてほしい行動が、かえって強くなります。
家族全員が要求に応えないなら、その行動はやがて減っていきます。ところが、5人のうち1人だけが応じると、「たまに叶う」状態になります。これは行動が消えるどころか、いちばん強くなる条件です。ギャンブルでは、まったく当たらない台より、たまに当たる台のほうが、人はやめづらくなるものです。犬も同じです。
みっつめ。「誰がいるか」が、犬にとっての合図になります。
飛びつきをやめたのではありません。「お父さんがいるときは飛びつかない」を学んだのです。犬は家全体のルールとして学んだのではなく、家族ごとのルールとして学んでいるのです。
この犬は、目の前の環境を正確に学んでいます。正確すぎるほどです。
それなのに、評価は下がっていきます。覚えが悪い。頑固。何度教えてもダメ。犬は起きていることに合わせて学んだだけなのに。
全員がまったく同じ対応をするのは、難しい
でも、困っているのは犬だけではありませんよね。家の中では、叱る役と甘やかす役が固定していきます。厳しくしている人ほど損をした気分になり、家族のあいだに小さな不満が溜まるかもしれません。
では、家族全員がまったく同じ対応をすればいいのか。
正直に言うと、それは難しいと思います。性格も違えば、犬と過ごす時間の長さも違う。声の大きさも、テンポも違います。それを完全に揃えることを目標にすると、必ず無理が出ます。
大事なのは、犬から見て、行動の結果が同じになることです。
では、そのためにどこを揃えればいいのでしょうか。
本当は、揃っているに越したことはありません。ただ、全部を一度に揃えようとすると続きません。ですから、重要な順に3つ挙げます。ここが揃っていなければ、ほかを揃えてもいつかそのトレーニングは破綻してしまいます。
まず、この3つから
1. 家族全員が、同じことを問題だと考えているか
飛びつきは「困ること」ですか?「かわいいからいい」と思って許容している人はいませんか?まず、何に困っているのかを家族で合わせましょう。
2. 望ましくない行動ではなく、代わりに何をしてほしいかを決める
飛びつかせない、ではなく、玄関では座って待つ。吠えさせない、ではなく、自分のベッドに行く。トレーニングが「教えること」であるなら、禁止は教えたことになりません。やめさせたい行動の数だけ、代わりの行動を決めて教える必要があります。
3. 決めたことに、例外を作らない
してほしくない行動に、1人だけが応じてしまう。こうなると、先ほどのギャンブルと同じ効果で行動はむしろ強くなってしまいます。望ましくない行動への対応は揃えましょう。
今日、家族でやってみてほしいこと
今日、「何に困っているか」紙に書き出してみてください。家族共通の「困りごと」ですか?まずは1つだけで構いません。
家族の意見が割れた、決めたのに続かない、代わりに何をさせたらいいのかわからない。そんなときは、ご相談ください。一緒に困りごとを整理し、何をどう教えればいいのか、お伝えします。